日本画巨匠たちの創作過程に迫った貴重映像を復元
日本画三山ドキュメンタリー

日本画三山 三部作 ドキュメンタリー美術映像DVD

一ツ橋文芸教育振興会では1980年から1993年まで美術映画三作品を「フィルムライブラリー」として全国の高等学校、美術館、博物館などの教育機関に無料貸し出しを行っていました。事業はビデオテープなどの視聴機材の変化、劣化により自然消滅していましたが、2019年、この三作品の原板から保存復刻を開始しました。
関係美術館や、諸官庁の協力を得て制作された映像は日本画巨匠たちの創作の過程や、現在では破壊され見ることができなくなったシルクロード遺跡など、美術史の上でも重要で貴重な資料映像です。集英社の貴重な資産を復元、保存して後世に残すことは、日本文化の向上発展に寄与することになると確信し、2020年8月に再公開。希望する学校・団体に無料貸し出しを行なっています。

文部省特別選定『東山魁夷の世界 旅・風景・人生』1978年40分

良い絵を描きたいということさえ一つの迷いであり、画家としての仕事の要点は「心がこもっているかこもっていないか」だと語る東山魁夷。画家を志して50年、誰にとっても親しみのある「自然の風景」を題材とする東山は、ただ一度しかない風景との巡り合いを常に求めていた。国内外を問わずひたすらに旅を続け、訪れた先でその瞬間にしか成立しない自然の風景を見出して作品を残していく。雪深い北国の情景に触れるため、ひとり雪山を歩くこともあれば、北欧の景色を求めてかつて留学したドイツをはじめとするヨーロッパ各地を巡り、日本では出会えない季節の移り変わりを写し取ることも。そうして多くの自然と対話を重ね、自身の代表作品となる大作「京洛四季」、「朝明けの潮」、唐招提寺の障壁画に取り組んでいく……。風景画家として自然と向き合い続けた東山魁夷の美と遍歴の旅を追う。

『平山郁夫のシルクロード』1980年40分

ユーラシア大陸の東西を結び、文化や物資、宗教の交易路となったシルクロード。その最大の中継地であるパルミュラを平山郁夫は訪れていた。15歳で体験した広島での被爆の後遺症に苦しみながら描いた「仏教伝来」を発表後、数々の仏教由来の作品を世に送り出していく。トルキスタン遺跡や現在では破壊され見ることの出来ないバーミヤンの大石仏など、シルクロードの寺院や遺跡の取材を精力的に続けた。45歳で念願の中国の古都・洛陽などをはじめて訪問し、史跡、仏蹟を見て仏教伝来の道を絵画として残していく。自身の被爆体験から仏教に目覚め、そして敬愛を込めて幾度となく足を運んだ仏教伝来の道を描く平山郁夫の姿に迫る。

『日本画家 加山又造 あくなき美の狩人』1982年40分

加山又造は、画家として“慣れ"を恐れ“変化"を使命として生きている。「自分は伝統の伝承者ではなく、断絶した新しき者である」という思いがあるから、古美術や古画などから写しをして美の本質を学び、断絶しているからこそ伝統の中の前衛精神を掴んで表現できるのだという。京都・西陣織の図案師の家に生まれ、動物をモチーフとした現実を超えた鋭い眼差しの作品を多く描いた。そして 「大画面を描きたい」という少年時代からの憧れを実現させた屏風画で装飾的な空間を表現した。大作を手がける一方で、新たな表現方法を探し求めて焼き物や版画などの小さな世界にも手を広げ、やがて水墨画へたどり着く……。常に斬新な美を追求し続けた加山又造の半生を、時代を象徴する印象的な作品と共に追う。