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2023/02/29「第43回(2023年度)全国高校生読書体験記コンクール」表彰式を行いました。

 「第43回 全国高校生読書体験記コンクール」の中央入賞者および学校賞の表彰式を、1月29日(月)に実施しました。会場となった東京ドームホテルに、中央入賞者8名と担当の先生をはじめ、選考委員や関係者約115名が来場し、華やかに贈賞の式を執り行いました。

 選考委員を代表して辻原登先生から作品の講評を、文部科学省 初等中等教育局 主任視学官の宮崎活志先生から祝辞をいただきました。式の最後には、8人の受賞者を代表して、文部科学大臣賞の平井歩佳さん(神奈川県立横浜平沼高等学校 2年)が答辞を読みあげました。全文は以下の通りです。
(撮影/相馬徳之)

【答辞】

 神奈川県立横浜平沼高等学校 2年 平井歩佳

 選考委員会の方々、一ツ橋文芸教育振興会の皆様、本日は私たちにこのような表彰式を開催していただきありがとうございます。かけがえのない本とのつながりを、形として残し、この賞をいただけたこと、大変嬉しく思います。

 私にとって本とは生活の一部です。本を選ぶ際は、思考への刺激や謎を解いた時の達成感を求めてミステリーを、心をほっと一息つかせたいときにはヒューマンものといったように自分がどんな体験をしたいか、どんな気分になりたいかで決めます。しかし、ときには思いがけず、あぁ面白かっただけで終わらない自分の琴線に引っかかる作品に巡り合うことがあります。私にとってそれは、決まって「悩みの種の解決策を示しているような本」です。そのような本に出会ったとき、私は登場人物たちと自分自身を重ね、対比します。彼らが、この本が自分の抱えているものを解決策へと導いているのではないかと、言葉に耳を傾け、展開に目が離せず夢中になって読みます。

 心に残るのは、一文のときもあります。それは、自分の中にあるモヤモヤの的を射てくれているようで、今まで分からなかった奥底に眠る自分の悩みが形をつくり、腑に落ちた心地になります。道を示してくれるのは、共通した家庭環境や将来への不安を抱えている人物のときもあれば、自分と全く異なるタイプの人物のときもあります。そして人物だけではなく物語自体が話を織りなして示してくれている、そんなふうに感じます。

 解決策とまでは言わずとも、それらの本は、自分の抱えているものに対する道標のようなものを内包しているように思われます。悩みの解決という点では、身近な人に相談することもできます。しかし、悩みというのは全てを人に打ち明けられるものでもなく、相手と自分との信頼関係も関わってきます。

 本はそういった垣根を超えて悩みに答えてくれる。もしくは解決への糸口を、見つけることができる。読書は、自分と対面している時間でもあると私は捉えています。

 もちろん全てを本が教えてくれるわけでもなく、頼りにしすぎて自分の考えを無くしてしまうのも良くないでしょう。けれども、大切な言葉や姿を拠り所とし、心を軽くすることは、生きていくうえでの一つの術だと思っています。

 本は自分にはなかった考えを与えてくれる。苦しい状況に置かれたときに読んだ本、それこそ自分にヒントを与えてくれた本に出会ったとき、読後の世界はガラリと変わり少し息がしやすくなっている、なんてこともあります。

 私の中では本が人生に欠かせないものとなっています。そんな本との出会いを、関わりを、再確認できる機会として、このコンクールを開催していただいたこと、本当に感謝しています。

 重ねてにはなりますが、本日はこのような機会を設けていただきありがとうございます。この機会を胸に、今後もまた様々な本に触れ、歩んでいきたいと思っています。