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2025/02/10「第44回(2024年度)全国高校生読書体験記コンクール」表彰式を行いました

1月27日(月)に、東京ドームホテルにおいて「第44回 全国高校生読書体験記コンクール」表彰式が行われました。文部科学大臣賞を1名に、全国高等学校長協会賞を2名に、一ツ橋文芸教育振興会賞を5名に授与し、併せて、各学校の先生に学校賞を授与。選考委員をはじめ関係者約110名が来場し、華やかに贈賞の式を執り行いました。

 選考委員を代表して穂村弘先生から作品の講評を、文部科学省 初等中等教育局 主任視学官の田村学様より祝辞をいただきました。また、式の最後には、8人の受賞者を代表して、文部科学大臣賞を受賞したJ・Tさん(神奈川県横浜市立横浜商業高校 1年)が堂々と答辞を読み上げ、会場から大きな拍手を受けました。答辞の全文は以下の通りです。
(撮影/相馬徳之)

【答辞】

本日は、このような華々しい表彰式を開催してくださり誠にありがとうございます。そしてこの度、文部科学大臣賞という誉れ高い賞をいただけたこと、大変嬉しく思います。

 私は、「作品」というものが好きです。作品を鑑賞するという行為は一人で完結させることができますが、不思議なことに鑑賞後は自分以外の他者の存在を強く感じます。それは本や絵、音楽にも必ず誰かの生き方が込められており、誰かの作品に触れるたび、自分の中にある常識を再認識させられるところが人付き合いと酷似しているからだと思います。同時に、人との関わり方は必ずしも直接的なものだけではなく、間接的に関わることもできると示唆している、これが私にとっての作品の概念であり、好きなところです。そしてこの十六年間、沢山の作品から、さまざまな感情に触れる機会をもらってきました。感謝、憧憬、罪悪感、幸福。感情は、正負問わずその人を、その人たらしめる核のようなものです。だからこそ、いつも私の心を揺さぶる作品たちと、その作品に魂を込めてくださる作者の方々には、尊敬の念に堪えません。今回私は、そんな誰かの心を動かす側に回りました。評価をいただくための文や、見てもらうための文として採択していただけたことは、作品を生み出すことに憧れを持つ私にとって身に余る光栄です。
 しかし、私の境涯はあまり芳しくはないので、たとえ文章で選ばれても、公式に名前も写真も出せないようでは、今回もこれから先も到底認めてもらえないだろうという懸念がありました。そんな中で、それらを考慮し、イニシャル表記や写真の不掲載を承諾してくださった一ツ橋文芸教育振興会の皆様の寛大なお心遣いには、感謝の言葉が見つかりません。
 なにより私も、作品と呼ぶに値するものを作るために努力してもよいのだと、周りの環境ではなく私自身を見て評価していただけたこと、私にとってこれ以上喜ばしいことがあるでしょうか。そう思うと私は能力が生まれた環境でつぶされることのない良い時代を生きることができ、幸運であると言えます。また、このような一つの成功で今まで不幸だと思っていたことさえもよく感じてしまうと自分の単純さを改めて実感しますが、その単純さのおかげで私はまた自分を認め、好きになり、そして様々なことに精進できるようになる。そうやって少しずつ私は自分の力だけで私を取り巻くすべての逆境を凌駕していきたい、そのような未来を必ずつかめると信じています。
 それでも今の私一人では、今日この場にいる皆様と同じ場所で言葉を交わすことも、こうして胸の内を語る機会をいただくことも叶わなかったでしょう。自分の未熟さ、不甲斐なさをどれほど痛切に感じようとも私が早く大人になれるわけではありませんが、本を読んでいる間だけは、確実に自分の心が豊かになり成長していく感覚を抱くことができます。
 時間は誰に対しても一定で、人の力で動かすことは不可能だからこそ、私にできることはそれを受け入れ、今目の前にあること一つ一つを心の成長につなげていくことなのだと思います。
 最後に、本日はこのような貴重な体験をさせていただいたことに改めて御礼申し上げます。この経験を自信とし、自分の人生に恥も悔いも残らぬよう、これからも精進してまいります。