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2025/10/6「第60回 高校生のための文化講演会」全プログラムが終了しました

 2025年度に第60回という節目の年を迎えた「高校生のための文化講演会」(主催:一ツ橋文芸教育振興会・各開催地新聞社)。5月19日から9月26日まで、前期・後期合わせて28名の講師が全国76の高等学校を訪れました。
 今年度も、講師陣には作家、書評家、学者、医師、漫画家、料理研究家、デザイナーなどバラエティ豊かな顔ぶれがそろい、職業について、高校生に伝えたい人生の重要な選択についてなど、興味深く示唆に富んだ講演をしてくださいました。

 同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授で一橋大学名誉教授の内藤正典さん(写真左上)は、ロシアのウクライナ侵攻や欧州におけるシリア難民など最新の世界状況を解説しつつ、「異なる部分を否定・攻撃するのではなく、尊重して受け入れる」多文化共生の重要性を強調。ユーモアを交えた語り口で、熱心にメモをとる生徒の姿も多く見られました。
 料理研究家のコウケンテツさん(写真右上)の演題は、「食と旅と仕事を通して学んだ、10代の間になんとなくやっておいた方が良いのかも?と思うことについてのお話」。プロテニスプレイヤーを目指して挫折し、バイトで学んだ料理や人との出会いが現在の道を拓いたという経歴を振り返り、「高校時代は、漠然としていてもいいから夢をもつことが大切」と語りかけました。
 作家の綿矢りささん(写真左下)は、雑誌の作品募集を偶然見たことから17歳で作家デビューした体験を語り、「思わぬところに職業のきっかけがある。自信がなくても恐れずに、まずはチャレンジして」と激励。また、近年は日常生活に描写を加えた“ライフスタイル文学”に取り組んでいることにも触れ、「皆さんもぜひ気軽に日常を綴ってみては」とエールを送りました。
 生物学者の福岡伸一さんは、青山学院大学やロックフェラー大学で教鞭をとり、大阪万博では「いのち動的平衡館」もプロデュースするなど国内外で活躍中。講演では「生命は利他的である」と題し、絶えず変化することで恒常性を保つという生命の“動的平衡”論をわかりやすく説き明かし、有限な生命の神秘について語ってくれました。

 今年度の講演会で聴講した生徒数は33,558人で、60年間の通算では約373万人に上りました。各開催校へは、一ツ橋文芸教育振興会より、講師のサイン入り著書と集英社文庫100冊セット、集英社国語辞典を寄贈。また、これまでの講師名をすべて記載した60周年記念クリアファイルを全聴講生徒に贈りました。
(写真提供・右上/神戸新聞社、左下/産経新聞社)