ニュース

2026/02/06「第45回(2025年度)全国高校生読書体験記コンクール」表彰式を行いました

去る1月26日(月)、東京ドームホテルにおいて「第45回 全国高校生読書体験記コンクール」表彰式が行われました。文部科学大臣賞を1名に、全国高等学校長協会賞を2名に、一ツ橋文芸教育振興会賞を5名に授与し、併せて、各学校の先生に学校賞を授与。選考委員をはじめ、受賞生徒の保護者など関係者約140名が来場し、華やかに贈賞の式を執り行いました。

 選考委員を代表して角田光代先生から作品の講評を、文部科学省 初等中等教育局 主任視学官の田村学様より祝辞をいただきました。また、式の最後には、8人の受賞者を代表して、文部科学大臣賞を受賞した嘉納美波さん(兵庫県立阪神昆陽高等学校 1年)が堂々と答辞を読み上げ、会場から大きな拍手を受けました。答辞の全文は以下の通りです。
(撮影/相馬徳之)

【答辞】

本日は、私たちのためにこのような盛大な式を開催してくださりありがとうございます。

怪談という個性的なジャンルで文部科学大臣賞を頂けたことをとても嬉しく、誇りに思います。

私は三年前に出会った一冊の怪談本が今でも人生の支えになっています。
ですが、体験記にも書いたように、私は中学三年間、陰湿ないじめを受けていました。
最初は怪談が好きなことや、図書館で怪談本を借りていることの否定から始まり、仲間はずれにされたり、悪口を言われたり、物を隠されたりしました。悪口やありもしない噂はあっという間に学年中に広まり、廊下ですれ違う度に人格否定をされ、私の姿を見ればコソコソと悪口を言われるというようなことが、ほぼ毎日のように続きました。
学校側は、証拠がないから、気にしすぎだとの一点張りで、被害者の私はどんどん不利な立場になっていきました。
そのためか、今回の受賞が決まったときも、素直には喜べない自分がいました。
また何か言われたり、されたりするのではないか。そう思ったからです。

確かに怪談は「縁起の悪いもの」「不気味なもの」という認識があり、マイナスなイメージを持っている人も一定数います。時には同じ業界の人同士でトラブルが起こってしまったり、相手を傷つけてしまったりするのも事実です。ですが、それ以上に応援してくださる方や私のことを知って勇気をもらえたと言ってくださる方がいます。
また、私は怪談と向き合う中で本当に好きだと思えるものに真剣に取り組む大切さに気がつくことが出来ました。周りの目を気にせず、ただ真剣に純粋に好きなことに向き合う大切さに気がついたのです。
そしてその大切さを教えてくださったのは、この本の著者であり、私の怪談の先生である宇津呂鹿太郎さんです。

現在、私は宇津呂さんに月に2回、怪談の語り方や表現について、稽古をつけて頂いています。稽古内で、技術面を磨きながら、中学三年間で私にかけられた呪いや、刺さったままの毒針を少しずつ解いています。いじめの後遺症は何をどうしても一生つきまとうことと思います。人前に立って自分の気持ちを伝えたり、話をしたりするのは正直今でも怖いです。
そんな気持ちを抱えたまま高校生になった私に、宇津呂さんは一つの仕事を与えてくださいました。それは、イベントスタッフとしての活動です。
宇津呂さんが出演する怪談ライブのお手伝いをさせてもらえることになったのです。

その中では、接客をする場面が当然あります。私がずっと避けてきた人と関わるということです。何回かスタッフとして参加しているうちに、少しずつ自分から挨拶が出来るようになりました。長い時間がかかりましたが、ようやく人前に出ることができるようになったのです。
今でもフラッシュバックに苦しめられることはありますが、私には怪談があるから大丈夫だと心の底からそう思えるのです。
だから私はこれからも稽古とイベントスタッフの経験を積み重ねて、自分なりの幸せをつかんだ世界一幸せな怪談師になります。そして誰かの心にそっと寄り添える怪談の活動をしていきます。

さて、SNSが普及し、色々な人と簡単に繋がれるようになった現代、少しだけネットから離れ、読書をすることで、自分と向き合ったり、人との繋がりを再認識できたりすることは多くあると思います。
あの夏、私が経験したようにその本は自分の人生に大きく関わったり、ご縁が広がったりする一冊かもしれません。
本というものはそのような力を持っていると、私は信じています。
かけがえのない一冊に、一人でも多くの人の心が救われることを願っています。

この読書体験記コンクールは、そのような人たちが思いや経験を綴り、自分のたどってきた道を振り返ることができる素晴らしいコンクールだと思います。

最後になりましたが、応募してから本日まで関わってくださった全ての方へ心からの感謝を申し上げ、答辞とさせて頂きます。

令和8年1月26日
中央入賞者代表 嘉納 美波